10年債と2年債



さて表題の逆イールド

株式市場や債券市場、為替市場などで話題となる逆イールドとは10年債と2年債との逆イールドを示しています

10年債とは文字通り10年間の債務であり政府が返済するのは10年後となります

一方の2年債とは文字通り2年間の債務であり政府が返済するのは2年後となります

普通に考えれば期間の長い10年債の金利が高くなり2年債の金利が低くなるのが自然です

しかし債券市場では度々、この長期と短期の金利差が逆転するという事態が発生します

これを逆イールドと表現している訳です

イールドとは利回りを意味するので単純に利回りが逆転していますという意味となります

正確には債務とは1年以上は長期と表現しているので2年債は長期金利となりますが、相対的に10年債と2年債とでは長期と短期となるので正式な意味とは異なりますが市場で使われている相対的な意味合いでの長短金利差逆転を逆イールドと表現している訳です

さて本来なら逆する筈の無い金利差が逆転している

この10年債と2年債との逆イールドが発生した後に景気後退、つまりはリセッション入りして来たという事実関係があり、この逆イールドが発生するとアメリカ経済はリセッション入りして行くと市場では判断されて行きます

しかし、この理論には相関関係はあるのですが、逆イールドがリセッションを招くという因果関係は存在しないのです

理論として正式に成立させるためには相関関係だけでは不十分となり、実質的には意味の無い理論となります

何故なら因果関係が無ければ、何故、そのような結果となるのかを証明出来ないからとなります

つまり相関関係だけを示しても理論としては成立せず、何となく、そうなって来たよね?という感想のレベルでしか無い訳です

それって、あなたの感想でしょ?

という流行している表現にしかならない訳です

実際に10年債と2年債との逆イールドがリセッションを招くという因果関係は見たことは無く、つまりは

それって、あなたの感想でしょ?

という次元でしか無いのです

しかし10年債と3ヶ月債との逆イールドには意味があり、この場合の逆イールド発生だと、やがてリセッションを招くという因果関係が明確に存在するので理論として成立しています

実際にFRBは10年債と2年債との逆イールドには全く関心は無くパウエル議長も意味の無い指標だと記者会見で一蹴し、10年債と3ヶ月債との逆イールドには注視していると明言しています


10年債と2年債との逆イールドには全く意味は無いし、リセッションを招くという因果関係も存在していません

しかし10年債と3ヶ月債との逆イールドには大きな意味があり、実際に経済や金融システムで大きな悪影響が生じて、やがてリセッションを招くのです

何が違うのか?

答えは簡単となります

10年債とは、およその銀行の運用利回りとなります

一方の3ヶ月債とは、およその銀行の資金調達コストとなります

このため10年債と3ヶ月債との逆イールドが発生すると銀行は逆鞘、ぎゃくざやと読みますが、逆鞘とは鞘、さやと読みますが、鞘とは平たく言えば利益となります

銀行は預金などで資金を調達し、貸出しや株や債券などへの投資で利益を得る収益構造となります

この利益を利鞘と呼ぶ訳です

この利鞘が逆鞘となるので、つまりは貸しても儲からない状態となって来る訳です

銀行は貸しても儲からない金利環境となっているので、その当然の結果として貸出しを抑制し、つまりは貸し渋りとなって行く訳です

経済が成長するには家計や企業が銀行から借りて家計なら家を買ったり車を買ったりして、企業なら銀行から借りて設備投資して行くことにより経済は成長して行くので経済の成長が止まるのです

更に貸し渋りとなると企業は必要な資金繰り目的の借り入れが出来なくなり、企業は資金繰りに行き詰まり破綻したり、破綻を避けるためにリストラして行くので企業破綻とリストラが増えて行き、その結果として経済は縮小し、つまりは景気後退となりリセッションとなるのです

このような因果関係があることから10年債と3ヶ月債との逆イールドとはリセッションを招く結果となり、つまりは理論として成立しているのです

実際にFRBは10年債と3ヶ月債との逆イールドを長期化はせず、利下げして対応して来た実績があります

今回も、この逆イールドは発生していて実際に銀行による貸し渋りは起きています

ただ今回の逆イールドでいつまでもリセッション入りしていないのは企業の債務が少なく、つまりは借金に依存しないで経済活動して来たし、して行ける状態なのでリセッション入りしていないのです

今回の救いは企業の債務が非常に少なく、家計の債務も貯蓄との比較となる純債務は過去50年で最も少ないことからラッキーだったとも言えますが、リセッション入りせずに物価が低下して来るのを待つ余裕があった訳です

私が一昨年からアメリカ経済はリセッション入りはしないと言い続けて来れたのは企業と家計の債務が歴史的な少なさだったからです

このように10年債と2年債との逆イールドには意味はありませんが10年債と3ヶ月債との逆イールドには大きな意味があり、リセッションを招くという因果関係もある訳です

ただ今回は企業にも家計にも債務は非常に少なかったのでリセッション入りせず、ラッキーだった結果だと言えます

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