中央銀行による資産縮小
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TwitterでFRBによるQT、つまり資産縮小がちょっと話題となっていたので、随分と久しぶりとはなるのですが、中央銀行による資産縮小の具体的な流れを考えて行きます
資産縮小なので文字通り資産が縮小されて行く訳ですが、その際に、どのくらい市場に影響が出るのかは誰も正確には分からないし、正確には数値で分析することは出来ず、かなりの推測により株式市場や債券市場、為替市場などへの影響が推測されているだけとなります
勿論、私も正確な数値を上げて、それぞれの市場に与える影響など出来ないし、かなりざっくりとした見方しか出来ません
出来るのは基本的な資産縮小の流れを可視化して、その流れから見て、どのような市場に影響を与えて行くかだけとなります
さて具体的な数値を入れて資産縮小の流れを書いて行こうかと思いますが、分かりやすく日銀が資産縮小すると仮定して話を進めて行きます
基本的な資産縮小の流れはFRBも同様なので、日銀に置き換えて話を進めて行きます
設定として
日銀の保有資産が500兆円
年に召還期限が到来する額が100兆円
この状態から年に50兆円の資産縮小を始めて行くとの仮定を置いて話を進めて行きます
量的緩和が終わると、日銀は年に100兆円の召還期限を迎えた国債を政府から返済されて行くので、そのままだと年に100兆円の資産が縮小されます
年に100兆円の資産縮小ならば、このように政府から返済されるのを、そのまま放置して行けば年に100兆円の資産縮小となるので、新たな買い入れを止めれば年に100兆円の資産縮小となる訳です
このような新たな買い入れを止める資産縮小だと資産が急激に減りすぎて債券市場、株式市場、為替市場などに与える影響が大き過ぎることから召還される一部を再投資して新たに買い入れて資産縮小のペースを緩やかにして、市場に与える影響を限定的とする訳です
年に100兆円も保有資産が減ると市場に与える影響が大き過ぎるので政策目標として年に50兆円の資産縮小とするというような政策決定となる訳です
年に50兆円の資産縮小と決定されると年に政府から召還される(平たく言えば政府による借金返済となります)のは100兆円となるので年に50兆円は新たに国債を買い入れて資産縮小のペースを100兆円から50兆円へと緩やかにして市場への影響を限定的にしていく訳です
これを
再投資
と呼んでいる訳です
年に100兆円の召還期限を迎えた国債があるが、その中から年に50兆円は再投資し資産縮小は年に50兆円とする
という感じとなります
で、次に政府の国債発行の視点から見て行きます
政府は年に200兆円程度の国債発行があり、召還期限が到来し返済する分と新たに発行して歳出の予算に充てて行く分の合計が毎年、このくらいの規模となっていて、毎年、毎年、国債発行計画が決定されて行きます
この政府による200兆円の国債発行を誰が買うのかという行き先として日銀が買い手として存在しているので、政府による200兆円の国債発行と日銀による資産縮小とは無関係となる訳です
政府が発行する200兆円の国債を誰が買っているのかの内訳の中に日銀が存在しているだけとなるので、日銀が買い入れを減らす資産縮小を始めると、日銀から別の投資家に買い手が移るだけとなるので政府の200兆円の国債発行には資産縮小の影響は与えない結果となるのです
先に記した日銀の資金の流れを当て嵌めて行くと200兆円の国債発行の買い手の内訳は
1、日銀は年に100兆円の召還期限を迎える国債を保有していたので量的緩和が終わり資産を現状維持していた時は年に100兆円の国債を新たに買い入れ再投資していた
2、日銀以外の銀行や生保、損保、年金資金、外国人投資家が残り100兆円の国債を買い入れていた
となり200兆円の国債発行の買い手の内訳となります
そこから日銀が年に50兆円の資産縮小を決定すると200兆円の国債発行の買い手の内訳とは
1、日銀は年に100兆円の召還期限を迎える国債を保有しているので年に50兆円の資産縮小を決定したことから50兆円は再投資する
2、日銀以外の銀行や生保、損保、年金資金、外国人投資家が残り150兆円を買い入れた
このような内訳となります
つまり日銀が50兆円の資産縮小を決定しても政府の国債発行には無関係であり、200兆円の国債の買い手の内訳が変わるだけとなる訳です
次に政府が発行している200兆円の発行には日銀の資産縮小の影響は無関係となりますが、買い手の内訳は大きく変わります
日銀が100兆円を買い入れ
日銀以外が100兆円を買い入れ
という買い手の内訳から
日銀が50兆円を買い入れ
日銀以外が150兆円を買い入れ
となり買い手の内訳が変わるのですが、日銀以外の買い手は国債の買い入れが年に100兆円から150兆円へと増えることから、日銀以外の買い手は、その50兆円の買い入れ資金が新たに必要となります
日銀以外の買い手は、この50兆円の買い入れ資金を確保するために保有資産を年に50兆円売却して確保して行きます
この50兆円を確保するために売却される資産とは
1、リスクの高い金融資産
2、リスクは中程度の金融資産
3、リスクの低い金融資産
という順番で売られて行きます
当たり前と言えば当たり前となりますが、中央銀行が資産縮小を始めたらリスクの高い順から金融資産を売却しリスクが最も低い国債を買い入れて保有資産のポジションを変えて行く訳です
リスクが高い金融資産とは
1、仮想通貨
2、原油やガソリン、小豆や大豆などの商品市場
3、新興市場
このようなリスク資産が真っ先に売られて行くので仮想通貨や商品市場、新興市場などが真っ先に暴落している訳です
仮想通貨や商品市場は適正価格がある訳では無いので投機的な市場であり、リスクが極めて高い市場となりリスクの高い金融資産となるので真っ先に売られて行く訳です
株式市場や不動産市場の場合、裏付けとなる資産価値が明確化しているので、価値の裏付けに基づいて価格が形成されて行くことから資産縮小が始まっても基本的に無関係となるのです
直接的には無関係とはなりますが、資産縮小を通じて金融は引き締まることから経済は減速するので、その影響により企業業績は悪化して行くことから間接的に株式市場にもマイナスに作用して行きますが、つまりは結局は企業業績次第となるので資産縮小により株式市場では売られるという因果関係は無いのです
次に政府が国債発行を減らすとどうなるかを考えます
政府は年に発行していた国債を200兆円から170兆円へと減らす場合と150兆円へと減らす場合とで考えて行きます
政府が国債発行を年に170兆円へと減らす場合
1、日銀は年に100兆円再投資していた
2、日銀以外の買い手が年に100兆円買い入れていた
そこから日銀が年に50兆円の資産縮小となり政府も国債発行を200兆円から170兆円へと減らした
1、日銀は50兆円を再投資した
2、日銀以外の買い手が120兆円買い入れた
と買い手の内訳が変わります
更に政府が国債発行を150兆円へと減らす場合
1、日銀は50兆円を再投資した
2、日銀以外の買い手は100兆円を買い入れた
という結果となるので、日銀が50兆円の資産縮小を決めてめ政府が国債発行を50兆円減らすと日銀以外の買い手の買い入れ額には変化が無く、つまりは需給バランスにも変化が無い結果となる訳です
FRBは大規模に資産を縮小させ始めてはいますが、アメリカ政府もコロナ禍対策が終わったので大規模に財政出動を減らし、一方でインフレにより税収は激増していることから国債発行が激減しているので、資産縮小による国債の金利への影響は限定的となるのです
つまり資産縮小、いわゆるQTによる影響を考えると金利に与える影響は限定的となり株式市場に与える影響も限定的となりますが、一方でリスク資産となる仮想通貨や商品市場への影響は極めて大きく、それぞれの市場に与える影響とは極端な違いとなる訳です
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