資産縮小の限界

 FRBによる資産縮小が進んでいます

金融政策には

1、金利の上げ下げ

2、量的緩和、資産縮小の保有資産の増減

という金融政策に分かれます

本来の意味としては金利を上げる利上げが金融引き締めとなり金利を下げる利下げが金融緩和となります

量的緩和や資産縮小は金融緩和や金融引き締めとは分けて量的緩和、量的引き締めと分けるのが妥当となります

現状のFRBの金融政策は利上げによる金融引き締めと資産縮小による量的引き締めの両立ての金融政策となります

一般的には利上げが注目されますが、株式市場や債券市場、為替市場などの市場参加者は同時に資産縮小に注目しており、前回の資産縮小の局面では2018年10月~12月までの2ヶ月でダウ平均が5000ドルも暴落したこともあり、市場参加者の多くでトラウマとなっていて、しかも誰も正確には資産縮小の影響は把握出来ないことから規模が遥かに大きな今回の資産縮小には怯えている状態なのです

しかし想定外に資産縮小、いわゆるQTが早く終わる可能性が高いのです

なぜか?

それはFRBの資産勘定と負債勘定の文字通りバランスシートに起因するからです


FRBの資産勘定にはアメリカ政府が発行している国債や住宅ローン債券があり、この資産を縮小して行くのが資産縮小となります

しかし文字通りバランスシート調整となるので、バランスシートの資産に対応している負債も縮小する必要があり、この負債の縮小に限界があるのです

FRBの資産はピーク時には、およそ9兆ドルが保有されていました

この9兆ドルの保有資産を縮小して行くのが資産縮小となりますが、その9兆ドルの資産にはバランスシートなので文字通りバランスすることから9兆ドルの負債が計上されています

つまり9兆ドルの資産を縮小するためには9兆ドルの負債も縮小する必要があり、それが限界を迎えるのです

負債勘定にはドル紙幣を発行し市中、つまり世の中で保有されている現金のドル紙幣が計上されています

ドル紙幣がおよそ2.9兆ドル計上されていて、そのうち45%となる1.3兆ドルが海外に住む外国人が保有しています

ドルを企業や家計で現金として保有していることから、この2.9兆ドル分は縮小することは不可能となるので9兆ドルの資産を縮小しようとしても、この2.9兆ドルは縮小しようが無い訳です

更に負債勘定には民間の銀行がFRBに預けてある民間銀行名義の当座預金があり、法定準備金と合わせ準備預金の最低必要額が2兆ドル~2.5兆ドルとなるので、この分も縮小しようにも縮小出来ない規模となるのです

2018年に資産を縮小して行った時には準備預金を減らし過ぎて市場では資金が枯渇して資金繰りに窮する金融機関や企業が続出し、慌てて資産縮小を止めざるを得なくなっています

昨年、モーサテに出演していた日銀出身の鵜飼さんが解説していましたが、FRBの必要最低限の準備預金とは、およそ2兆ドル~2.5兆ドル程度は必要となり、つまりはそれ以上は縮小出来なくなるのです

つまりFRBが資産を縮小したくても

1、ドル紙幣発行残高 2.9兆ドル

2、準備預金 2兆ドル~2.5兆ドル

合計  4.9兆ドル~5.4兆ドル

この程度以下には資産は縮小出来ないのです

現時点でFRBの資産勘定には8.5兆ドルが計上されており、最大で、あと4兆ドル程度が資産縮小の限界となる訳です

しかもドル紙幣発行残高や準備預金はアメリカ経済の名目GDPの成長に比例して増え続けることから今のように物価が高騰している時は


名目GDP成長率=実質GDP成長率+物価上昇率


となるので物価が高騰していると、それだけドル紙幣や準備預金の増加が急激となる訳です

更に仮想通貨が暴落していることから犯罪系のアングラマネーが仮想通貨から引き出されて現金としてドル紙幣で保有されて行くのでドル紙幣増加に追い打ちをかけるような状態となっているのです

このため現時点で、まだ8.5兆ドルは資産があるので資産縮小の限界とはならなくても、ドル紙幣と準備預金が急増して行く環境となっていることから減らし過ぎてしまうと、物価や経済には無関係で量的緩和を再開して資産を増やして増え続ける負債に対応して行く必要性に迫られてしまうことから、少なくとも市場の想定外に資産縮小は早期に終わる可能性が高いのです

コメント

このブログの人気の投稿

アメリカ市場のイメージ

イエレン米財務長官

アメリカ大寒波